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支配人のつぶやき・・・

住宅に関することや、日々の雑感を綴ってゆきます。 支配人 杢谷 保夫

第5回 「住宅は住むための機械である。」について

7月17日、世界遺産委員会は、東京・上野の国立西洋美術館を含む「ル・コルビュジエの建築作品」の世界文化遺産への登録を決めました。

以前から推薦されていたのですが、厳しい審査の中でだんだんと作品数が減り、最終的には17作品が登録される事になりました。

この17作品の中に、ル・コルビュジエ(スイス1887~1965年)が基本設計し、3人の日本人弟子が後を引き継いで完成させた(1959年)東京・上野の国立西洋美術館が入っていることから、国内メディアにも大きく取り上げられました。

国立西洋美術館

ル・コルビュジエは20世紀の建築に最も大きな影響を与えた巨匠の1人で、世界中に点在する彼の作品は、住宅から集合住宅、教会、美術館、庁舎さらに都市計画へと多岐にわたっています。また、家具や絵画・彫刻そして多くの著作を残しました。「住宅は住むための機械である。」は、彼がその著作『建築をめざして』(1923年)で語った言葉です。

当時、第2次産業革命により重工業が発達して、機械は重厚長大化し、ますます冷たく非人間的になっていたでしょうから、「快適な生活の場であるべき住宅が機械である」というのは、人々には理解しがたい言葉であったかもしれません。しかし・・・・

時計職人の父とピアノ教師の母の間に生まれたコルビュジェの機械イメージとは、冷たく非人間的なものではなく、無駄がなく合理的で規則正しく、感動さえ覚えるものであったに違いありません。

同時期に設計されたサヴォア邸(1931年竣工)は、当時の西欧の重厚で装飾的な建築とはまったく異なる設計で建築界に大きな衝撃を与え、20世紀建築の最高傑作の一つと言われています。

スケッチ写真

 

 

 

 

そこでは、コルビュジェが提唱した【近代建築の五原則】「ピロティ」「屋上庭園」「自由な平面」「横長の窓」「自由なファサード」が駆使され、それまで誰も経験したことのなかった豊な空間が実現されています。

コルビュジェにとって「住む」とは、「住宅のなかでの迅速で正確な作業や快適な休息のみならず、思考や感動、美の感覚をも含んだものであり、それを実現する機械が住宅である」と言っているように思います。

コルビュジェの後期の作品では機能性・合理性よりも感動や美を重視する傾向がますます強くなり、ロンシャンの教会(1955年竣工)のような最高傑作とも言われる建築が生まれました。

スケッチ 2写真2